「自分のキャリア、このままでいいのだろうか?」と将来に漠然とした不安を抱えていませんか。本記事を読めば、厚生労働省が推奨する「ジョブ・カード」の様式も参考にしながら、具体的で実現可能なキャリア形成プランを作成する全手順がわかります。自己分析に役立つフレームワークから、SMARTの法則を使った目標設定のコツ、すぐに使えるテンプレートまで網羅的に解説。結論として、キャリア形成プランの作成が不可欠なのは、変化の激しい現代において、行き当たりばったりではなく明確な指針を持つことが、将来の安心と自分らしいキャリアの実現に直結するからです。この記事を最後まで読めば、あなただけのキャリアの羅針盤が手に入ります。
なぜ今キャリア形成プランの作成が必要なのか

「キャリア形成プラン」と聞くと、一部の意識の高い人だけが必要なもの、あるいは就職活動の時に一度だけ考えたもの、と感じる方もいるかもしれません。しかし、現代社会において、キャリア形成プランの作成は、すべての人にとって自身のキャリアを豊かにし、未来を切り拓くために不可欠なツールとなっています。
終身雇用や年功序列といった、かつての日本型雇用システムが当たり前ではなくなった今、会社にキャリアを委ねるのではなく、自分自身でキャリアを主体的に設計し、構築していく「キャリア自律」の考え方が重要視されています。この章では、なぜ今、私たち一人ひとりがキャリア形成プランを作成する必要があるのか、その背景と重要性を詳しく解説します。
変化の時代を生き抜くための羅針盤
私たちは今、VUCA(ブーカ)と呼ばれる、将来の予測が困難な時代を生きています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字を取った言葉で、目まぐるしく変化し、先行きが不透明な現代社会の状況を的確に表しています。
このような時代において、明確な指針なしにキャリアを歩むことは、羅針盤を持たずに大海原へ漕ぎ出すようなものです。キャリア形成プランは、この不確実な時代を生き抜くための、あなただけの「羅針盤」の役割を果たします。
具体的に、私たちの働く環境は以下のように大きく変化しています。
| 変化の側面 | 従来の働き方(昭和・平成初期) | 現代の働き方 |
|---|---|---|
| 雇用のあり方 | 終身雇用・年功序列が主流 | 成果主義への移行、転職の一般化 |
| 求められるスキル | 一つの会社で通用する専門性 | 業界や職種を超えて通用するポータブルスキル、リスキリングの重要性 |
| キャリアの考え方 | 会社が用意したキャリアパスを歩む | 自分自身でキャリアを設計する「キャリア自律」 |
| 働き方の選択肢 | 会社への出社が基本 | リモートワーク、副業・兼業、フリーランスなど多様化 |
| 人生設計 | 定年まで勤め上げ、老後は年金で生活 | 人生100年時代を見据え、長く働き続けるためのキャリアプランニングが必要 |
AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な進展は、既存の仕事を奪う可能性がある一方で、新たな職業を生み出しています。また、「人生100年時代」と言われるように、私たちの働く期間はますます長くなっています。このような変化の激しい時代だからこそ、場当たり的にキャリアを選択するのではなく、自分自身の価値観や目標に基づいたキャリア形成プランを持つことが、変化に柔軟に対応し、納得感のある職業人生を送るための鍵となるのです。
国も推進する主体的なキャリア形成
個人の主体的なキャリア形成の重要性は、国も強く認識しており、様々な施策を通じて後押ししています。これは、個人の幸福だけでなく、日本経済全体の持続的な成長にとっても不可欠であると考えられているためです。
厚生労働省は、企業が従業員のキャリア開発を支援する「セルフ・キャリアドック」制度の導入を推奨しています。これは、従業員が定期的にキャリアコンサルティングを受け、自身のキャリアプランを見直す機会を提供する仕組みです。また、個人のキャリアプランニングや職業能力の証明に役立つ「ジョブ・カード」の活用も推進しています。
国が主体的なキャリア形成を推進する背景には、企業と個人の双方にとって大きなメリットがあるからです。
| 対象 | メリット |
|---|---|
| 個人にとって |
|
| 企業にとって |
|
このように、キャリア形成プランの作成は、もはや特別なことではありません。変化の時代を自分らしく生き抜き、豊かな職業人生を実現するために、すべてのビジネスパーソンにとって必須の取り組みと言えるでしょう。次の章からは、具体的にどのようにプランを作成していくのか、そのステップを詳しく見ていきます。
キャリア形成プラン作成の前に知るべき基本
具体的なキャリア形成プランの作成に取り掛かる前に、まずは基本となる知識を整理しておきましょう。プラン作成の土台となる重要な用語の違いや、国が推奨している便利なツールについて理解を深めることで、より精度の高いプランニングが可能になります。ここでは、混同されがちな「キャリアプラン」と「キャリアパス」の違い、そして厚生労働省が提供する「ジョブ・カード」について詳しく解説します。
キャリアプランとキャリアパスの違い
「キャリアプラン」と「キャリアパス」は、どちらもキャリアを考える上で重要な概念ですが、その視点と主体が異なります。キャリアプランは「個人」が主体となって自身の理想の働き方や生き方を設計する「地図」であるのに対し、キャリアパスは主に「企業」が主体となって示す社内での昇進ルートや職務経歴の「道筋」を指します。両者の違いを正しく理解し、自身のキャリア形成に活かすことが重要です。
| 項目 | キャリアプラン | キャリアパス |
|---|---|---|
| 主体 | 個人 | 企業(が提示することが多い) |
| 視点 | 個人の価値観やライフプランに基づいた長期的・多角的な視点 | 組織内での昇進・異動を前提とした直線的な視点 |
| 目的 | 理想の働き方や生き方を実現すること | 組織内での特定の職位や役割に到達すること |
| 具体例 | 「5年後に専門スキルを活かしてマネージャーになり、10年後には独立してコンサルタントとして活躍したい」 | 「一般社員からスタートし、主任、係長を経て、最短7年で課長に昇進する」というモデルケース |
企業が提示するキャリアパスは、あくまでその組織内での成長モデルの一つです。自身のキャリアプランを実現するための一つの選択肢として捉え、会社のキャリアパスに合わせるだけでなく、時には転職や副業、独立なども視野に入れた主体的なキャリアプランを描くことが、変化の激しい現代においては不可欠と言えるでしょう。
厚生労働省が推奨するジョブ・カードとは
ジョブ・カードとは、厚生労働省が様式を定め、広く活用を推奨している「生涯を通じたキャリアプランニング」と「職業能力証明」のためのツールです。個人のキャリア形成を促進する目的で作成されており、自己分析から目標設定、求職活動まで幅広い場面で活用できます。
ジョブ・カードは主に以下のシートで構成されており、これらを順に記入していくことで、自身のキャリアを体系的に整理し、可視化することができます。
- キャリアプランシート:自己理解を深め、将来の目標や働き方を具体的に描くための中心的なシートです。価値観、興味、強みなどを整理し、今後のキャリアプランを言語化します。
- 職務経歴シート:これまでの職務経験について、具体的な業務内容や役割、得られた知識・スキルなどを詳細に記述します。自身の経験の棚卸しに役立ちます。
- 職業能力証明シート:免許や資格、教育訓練の受講歴、表彰歴などを記録し、客観的な職業能力を証明するためのシートです。
ジョブ・カードを作成するメリットは多岐にわたります。まず、自身の強みや課題が明確になり、自己理解が深まります。そして、その内容をもとにハローワークなどでキャリアコンサルティングを受けることで、より客観的で実現可能性の高いキャリアプランを練り上げることが可能です。また、完成したジョブ・カードは、履歴書や職務経歴書だけでは伝えきれない詳細な情報を補完する応募書類として、求職活動時に提出することもできます。企業が従業員のキャリア形成を支援する「セルフ・キャリアドック」制度で活用されることもあり、公的にも信頼性の高いツールとして認知されています。
失敗しないキャリア形成プラン作成の5ステップ
キャリア形成プランの作成は、決して難しいものではありません。しかし、やみくもに進めると、現実離れした計画になったり、途中で挫折してしまったりする可能性があります。ここでは、誰でも着実に、そして失敗なくキャリア形成プランを作成できるよう、具体的な5つのステップに分けて解説します。このステップを一つずつ丁寧に進めることで、あなただけの、実現可能なキャリアの羅針盤が完成するでしょう。
ステップ1 自己分析で現在地を把握する
すべての旅が現在地の確認から始まるように、キャリア形成プラン作成も「自己分析」からスタートします。自分自身の興味・関心、得意なこと(能力)、そして大切にしたい価値観を客観的に理解することが、プラン全体の土台となります。自分を深く知ることで、キャリアにおける選択の精度が高まり、納得感のある道を歩むことができるのです。
強みと弱みを洗い出すWill-Can-Mustフレームワーク
自己分析に役立つ代表的なフレームワークが「Will-Can-Must」です。これは、「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」「やるべきこと(Must)」の3つの要素を書き出し、それらが重なる領域を見つけることで、自分のキャリアの核となる方向性を探る手法です。
| 要素 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| Will(やりたいこと) | 自身の興味・関心、将来的に成し遂げたいこと | ・人の成長を支援したい ・新しいサービスを企画したい ・専門性を高めて第一人者になりたい |
| Can(できること) | 今持っているスキル、経験、得意なこと | ・データ分析と資料作成が得意 ・プロジェクトの進行管理ができる ・後輩への指導経験がある |
| Must(やるべきこと) | 会社や社会から期待されている役割、責任 | ・所属部署の売上目標を達成する ・チームの生産性を向上させる ・コンプライアンスを遵守する |
この3つの円が重なる部分こそ、あなたが最も意欲的に、かつ能力を発揮して貢献できる領域です。例えば、「後輩への指導経験(Can)」があり、「人の成長を支援したい(Will)」という思いを持ち、「チームの生産性向上(Must)」を期待されているなら、「チームリーダーとしてメンバー育成に注力する」といった方向性が見えてきます。
過去の経験を棚卸しするキャリアの振り返り
これまでの職業経験を時系列で振り返る「キャリアの棚卸し」も、自己分析に不可欠です。成功体験や失敗体験、やりがいを感じた仕事、逆につらかった仕事などを具体的に書き出すことで、自分の強みや価値観、モチベーションの源泉を再発見できます。
振り返る際は、以下の項目を意識して書き出してみましょう。
- 時期・所属:いつ、どの会社・部署にいたか
- 業務内容:どのような仕事を担当していたか
- 役割・役職:どのような立場で業務に取り組んでいたか
- 実績・成果:具体的な数字や事実で何を実現したか
- 得たスキル・知識:その経験を通じて何を学んだか
- 感じたこと:仕事に対するやりがい、喜び、困難、不満など
これらの情報を元に、モチベーションの浮き沈みをグラフ化する「モチベーショングラフ」を作成するのも効果的です。どのような時にやりがいを感じ、パフォーマンスが上がるのか、自分の傾向を視覚的に把握することができます。
ステップ2 将来のありたい姿を描く
自己分析で「現在地」が明確になったら、次は目的地である「将来のありたい姿」を描きます。ここで重要なのは、単に「どんな仕事がしたいか」だけでなく、「どんな人生を送りたいか」という広い視点で考えることです。仕事は人生を構成する重要な要素の一つですが、すべてではありません。理想のライフスタイルの中に、仕事をどう位置づけるかを考えることで、より長期的で満足度の高いキャリアプランを描くことができます。
理想のライフプランから考える
5年後、10年後、そして20年後、あなたはどこで、誰と、どのような生活を送っていたいでしょうか。キャリアプランをライフプランという大きな枠組みの中で捉え直してみましょう。
例えば、以下のような項目について、理想の姿を自由に書き出してみてください。
- 働き方:会社員、フリーランス、起業? 勤務地は? 労働時間は?
- 収入:どのくらいの年収が理想か?
- プライベート:結婚、子育て、趣味、学習、社会貢献活動の時間は?
- 住環境:都会、郊外、地方? 持ち家、賃貸?
- 人間関係:どのような人々と関わっていたいか?
- 健康:心身ともにどのような状態でありたいか?
これらの理想を実現するために、仕事を通じて何を得る必要があるのかを逆算して考えることで、キャリアの方向性がより具体的になります。
価値観を明確にするための質問リスト
「ありたい姿」の解像度を高めるためには、自分が何を大切にしているのか、つまり「価値観」を深く理解することが重要です。価値観は、キャリアにおける意思決定のブレない「軸」となります。以下の質問に自問自答することで、自分の価値観を明らかにしていきましょう。
- 仕事を通じて最も得たいものは何ですか?(例:経済的安定、社会への貢献、専門性の追求、権限と裁量、自由な時間)
- どのようなときに「仕事が楽しい」「充実している」と感じますか?
- これまでの人生で、最も誇りに思っている決断は何ですか? なぜですか?
- 尊敬する人は誰ですか? その人のどのような点に惹かれますか?
- 仕事において、これだけは絶対に譲れないという条件は何ですか?
これらの問いに正解はありません。自分自身の心と向き合い、正直な答えを探すプロセスそのものが、納得のいくキャリア形成プランにつながります。
ステップ3 具体的な目標を設定する
将来のありたい姿が描けたら、それを実現するための具体的な「目標」に落とし込みます。漠然とした夢を、測定可能で達成可能なマイルストーンに変換する作業です。目標が具体的であればあるほど、次にとるべき行動が明確になります。
SMARTの法則を活用した目標設定のコツ
効果的な目標設定のフレームワークとして広く知られているのが「SMARTの法則」です。以下の5つの要素を満たすことで、目標の具体性と実現可能性が格段に高まります。
| 要素 | 意味 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|---|
| S (Specific) | 具体的で分かりやすいか | 営業として成長する | 新規顧客を10社開拓し、売上500万円を達成する |
| M (Measurable) | 測定可能か、数値で示せるか | 英語を頑張る | 1年後にTOEICで800点を取得する |
| A (Achievable) | 達成可能か、現実的か | 1ヶ月でWebサイトを一人で開発する(未経験) | 半年間でプログラミングスクールを修了し、簡単なポートフォリオサイトを作成する |
| R (Relevant) | 最終的なゴールと関連しているか | (将来は企画職希望なのに)営業のインセンティブ獲得にのみ注力する | (企画職希望なので)市場調査やデータ分析のスキルを磨き、営業企画の提案を行う |
| T (Time-bound) | 期限が明確か | いつか資格を取る | 今年の10月の試験で基本情報技術者試験に合格する |
短期・中期・長期の目標を立てる
最終的なゴールである「ありたい姿」を長期目標とし、そこから逆算して中期・短期の目標を設定します。大きな目標を小さなステップに分解することで、日々の行動に集中しやすくなり、着実に前進している実感を得ることができます。
- 長期目標(5年~10年後):最終的に到達したい姿。例:IT企業のプロジェクトマネージャーとして、大規模開発案件を率いる。
- 中期目標(1年~3年後):長期目標を達成するための中間地点。例:3年後までにチームリーダーに昇格し、5名以上のメンバーのマネジメントを経験する。応用情報技術者試験に合格する。
- 短期目標(3ヶ月~1年後):中期目標達成のために、まず着手すべきこと。例:半年以内に現在のプロジェクトでサブリーダーを任される。毎日1時間の学習時間を確保し、基本情報技術者試験の勉強を始める。
ステップ4 行動計画に落とし込む
目標を設定したら、それを達成するための具体的な「行動計画(アクションプラン)」を作成します。目標という「目的地」までの「地図」と「移動手段」を決めるステップです。「何を」「いつまでに」「どのように」行うのかを、日々のタスクレベルまで具体化しましょう。
目標達成に必要なスキルや経験をリストアップ
設定した短期・中期目標と、現在の自分を比較し、そのギャップを埋めるために必要なスキル、知識、経験は何かを洗い出します。これを「スキルギャップ分析」と呼びます。
例えば、「チームリーダーに昇格する」という中期目標に対し、現在の自分には「後輩への指導経験」はあるが、「プロジェクト全体の進捗管理能力」や「部門間の調整能力」が不足している、といったように具体的にリストアップします。
具体的なアクションと期限を決める
洗い出したスキルや経験を身につけるための、具体的な行動(ToDo)を考え、それぞれに期限を設定します。誰が見ても何をすべきか分かるレベルまで具体的に書くことがポイントです。
| 目標 | 必要なスキル・経験 | 具体的なアクション(ToDo) | 期限 |
|---|---|---|---|
| 半年以内にサブリーダーを任される | 進捗管理能力 | ・上司に依頼し、週次の進捗会議の議事録作成を担当する ・書籍「プロジェクトマネジメントの基本」を読む | ・来週から ・今月中 |
| 後輩育成スキル | ・担当の後輩と週1で30分の1on1ミーティングを実施する | ・来週から | |
| 応用情報技術者試験に合格する | IT全般の知識 | ・参考書を購入し、学習計画を立てる ・平日毎朝1時間、休日は3時間勉強する | ・今週末まで ・試験日まで継続 |
ステップ5 定期的に見直しと修正を行う
キャリア形成プランは、一度作成したら終わりではありません。むしろ、作成した時点が新たなスタートです。計画通りに進んでいるかを確認し、必要に応じて柔軟に修正していくプロセスが最も重要です。この見直しのサイクルを回すことで、プランはより現実的で実効性の高いものへと進化していきます。
社会情勢や企業の動向、そしてあなた自身のライフステージや価値観も時間とともに変化します。計画に固執するのではなく、変化に対応しながら軌道修正を行うことを前提としましょう。
見直しのタイミングとしては、以下のような時期が考えられます。
- 定期的な見直し:3ヶ月に1回、半年に1回など、あらかじめ時期を決めておく。
- 節目での見直し:年度末や誕生日、異動や昇進、転職など、環境が変化したタイミング。
見直しの際には、以下の点を確認しましょう。
- 行動計画(ToDo)は実行できているか?
- 短期目標の達成度はどうか?
- 目標設定や行動計画に無理はなかったか?
- 自分の興味や価値観に変化はないか?
- 長期目標(ありたい姿)は今も変わらないか?
このPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回し続けることが、キャリア形成プランを「絵に描いた餅」で終わらせず、自己実現のための強力なツールとするための鍵となります。
厚生労働省の様式で学ぶキャリア形成プラン作成の具体例

国が推奨するキャリア形成のツールを活用することで、より具体的で実現可能性の高いプランを作成できます。ここでは、厚生労働省が提供する「ジョブ・カード」を題材に、実践的なキャリア形成プランの作成方法を具体例とともに解説します。
ジョブ・カードの記入例とポイント解説
ジョブ・カードは、「生涯を通じたキャリア・プランニング」と「職業能力証明」の機能を担うツールです。自身のキャリアを棚卸しし、今後の目標を明確にする上で非常に役立ちます。特に中心となる「キャリアプランシート」の記入例を見ていきましょう。
ここでは、32歳・営業職のAさんが、未経験のWebマーケティング職への転職を目指すケースを想定して記入例を作成しました。
キャリアプランシート記入例(様式1-1)
| 項目 | 記入例(32歳・営業職Aさんの場合) | 記入のポイント |
|---|---|---|
| 1. 価値観、興味、関心事など |
|
自己分析で見つけた「Will(やりたいこと)」を具体的に言語化します。「なぜそう思うのか?」という背景まで深掘りできると、より説得力が増します。 |
| 2. 強みなど |
|
これまでの職務経歴や経験から得た「Can(できること)」を客観的な事実として書き出します。資格や表彰歴などもあれば具体的に記載しましょう。 |
| 3. 将来取り組みたい仕事や役割 |
【短期目標(1年後)】 【中期目標(3年後)】 【長期目標(10年後)】 |
短期・中期・長期の時間軸で、ありたい姿を具体的に描きます。職種名だけでなく、「どのような役割を果たしたいか」「どんな成果を出したいか」まで踏み込んで考えると、目標がより明確になります。 |
| 4. 習得すべき知識・能力 |
|
目標達成のために、現在の自分に不足しているスキルや知識(Must)を洗い出します。求人情報や目標とする職種で働く人のスキルセットを参考にすると、より現実的なリストが作成できます。 |
| 5. 具体的な取り組み内容 |
|
「4」で洗い出したスキルを習得するための具体的なアクションプランを、「いつまでに」「何をするか」が分かるように記述します。測定可能で期限のある計画にすることが、実行力を高める鍵です。 |
目的設定に役立つキャリアコンサルティングの活用
キャリア形成プランを一人で作成するのが難しい、客観的な意見が欲しいと感じる場合は、専門家であるキャリアコンサルタントへの相談が有効です。国もキャリアコンサルティングの活用を推進しており、様々な場所で相談する機会が設けられています。
キャリアコンサルティングとは?
キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことです。国家資格を持つキャリアコンサルタントが、対話を通じて相談者の自己理解を深め、主体的なキャリア選択を支援します。
ジョブ・カード作成の過程でキャリアコンサルティングを受けることで、以下のようなメリットが期待できます。
- 客観的な視点での自己分析: 自分では気づかなかった強みや価値観を発見できる。
- 思考の整理: 漠然とした悩みや希望が整理され、目標が明確になる。
- 専門的な情報提供: 労働市場の動向や必要なスキル、学習方法など、専門的な情報が得られる。
- 計画の具体化: 現実的で実行可能な行動計画を立てるためのサポートが受けられる。
どこで相談できるのか?
キャリアコンサルティングは、以下のような公的機関で無料で受けられる場合があります。
- ハローワーク(公共職業安定所): 求職者支援の一環として、専門の相談員によるキャリアコンサルティングが提供されています。ジョブ・カードの作成支援も行っています。
- ジョブカフェ(若者しごとセンター): 主に若年層を対象とした就職支援施設で、キャリアカウンセリングやセミナーなどを実施しています。
- 地域若者サポートステーション(サポステ): 働くことに悩みを抱える若者向けに、キャリアコンサルタントなどの専門家が相談に応じています。
これらの機関を活用し、専門家の力を借りることで、より納得感のあるキャリア形成プランを作成することが可能になります。まずは最寄りの相談窓口を調べてみることから始めてみましょう。
キャリア形成プラン作成に役立つテンプレートとツール
キャリア形成プランをゼロから作成するのは大変な作業です。そこで、思考を整理し、効率的にプランを作成するために役立つテンプレートやツールをご紹介します。これらを活用することで、自己分析や目標設定の質を高め、より具体的で実現可能な計画を立てることができるでしょう。
無料で使えるキャリアプランシート
キャリアプランシートは、キャリアプランニングに必要な項目が網羅されたフォーマットです。ダウンロードしてすぐに使える無料のテンプレートを活用すれば、考えるべきポイントを見落とすことなく、スムーズにプラン作成を進められます。
テンプレートの主な種類と特徴
キャリアプランシートには、厚生労働省が提供する公的なものから、転職サイトなどが提供する汎用的なものまで様々な種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の目的に合ったものを選びましょう。
- 厚生労働省「ジョブ・カード」
公的な書類として職業訓練や求職活動の場で活用できる、信頼性の高いテンプレートです。職務経歴や学習歴、保有スキルなどを詳細に記入する欄があり、これまでのキャリアを網羅的に棚卸しするのに最適です。 - 汎用的なキャリアプランシート(Excel・スプレッドシート形式)
自己分析(Will-Can-Must)、SWOT分析、短期・中期・長期の目標設定など、キャリアプラン作成の基本的なフレームワークが組み込まれていることが多いです。カスタマイズ性が高く、自分の考えを自由に書き込みたい方におすすめです。
一般的なキャリアプランシートの項目例
多くのキャリアプランシートには、以下のような項目が含まれています。これらの問いに答えていくことで、自然とキャリアの方向性が明確になります。
| 項目カテゴリ | 主な記入項目 | 記入内容の例 |
|---|---|---|
| 自己分析 | 強み・弱み、価値観、興味・関心(Will-Can-Must) | 強み:課題解決力 価値観:社会貢献 やりたいこと:DX推進 |
| 現状把握 | 現在の職務内容、保有スキル、実績、課題 | 現在の職務:営業 保有スキル:TOEIC800点 課題:マネジメント経験不足 |
| 将来像 | 理想の働き方、ライフプラン、3年後・5年後・10年後の姿 | 5年後:Webマーケティングチームのリーダーとして活躍する |
| 目標設定 | 短期・中期・長期の目標(SMARTの法則を意識) | 短期目標:Web解析士の資格を1年以内に取得する |
| 行動計画 | 目標達成に必要なスキル、具体的なアクション、期限 | アクション:オンライン講座を受講し、毎週10時間学習する |
自己分析に便利なオンライン診断ツール
自分一人で自己分析を進めるのが難しいと感じる場合は、客観的な視点を取り入れられるオンライン診断ツールが役立ちます。数多くのツールが存在しますが、ここでは信頼性が高く、キャリア形成の参考になるものを目的別に紹介します。
目的別おすすめ診断ツール
自分の「強み」を知りたいのか、「適職」を知りたいのか、目的によって使うべきツールは異なります。複数のツールを試すことで、多角的に自分を理解することができます。
| 目的 | 診断ツールの名称 | 特徴 | 診断でわかること |
|---|---|---|---|
| 強み・才能の発見 | リクナビNEXT「グッドポイント診断」 | リクルートが提供する無料の本格診断。18種類の中から自身の5つの強みを客観的に示してくれる。 | 独創性、現実思考、決断力、柔軟性など、自身の潜在的な強み。 |
| 適職・向いている仕事の把握 | マイナビ「適職診断MATCH plus」 | パーソナリティや潜在的な能力を分析し、向いている仕事のスタイルや職種を具体的に提示してくれる。 | 仕事への価値観、向いている職種、企業風土との相性など。 |
| 性格・パーソナリティの理解 | 16Personalities性格診断テスト | 世界的に利用されているMBTI診断がベース。興味の方向性や物事の判断基準などから16タイプの性格に分類する。 | 自身の性格タイプ、その長所と短所、他者との関わり方など。 |
診断ツール活用の注意点
オンライン診断は非常に便利ですが、活用する際にはいくつかの注意点があります。結果を鵜呑みにせず、自己理解を深めるための「きっかけ」として捉えましょう。
- 結果はあくまで参考情報と捉える
診断結果がすべてではありません。結果に縛られず、自分自身の経験や感情と照らし合わせながら、「なぜこの結果が出たのか」を深掘りすることが重要です。 - 複数のツールを試してみる
一つのツールの結果だけを信じるのではなく、異なる切り口の診断を複数受けてみましょう。共通して指摘される項目があれば、それはあなたの核となる特性である可能性が高いです。 - 診断結果を他者からのフィードバックとすり合わせる
診断でわかった自分の強みや特徴について、信頼できる上司や同僚、友人にフィードバックを求めてみましょう。客観的な自己評価と他者からの評価を比較することで、より正確な自己像を掴むことができます。
まとめ
本記事では、変化の激しい時代を生き抜くための羅針盤となる、失敗しないキャリア形成プランの作成方法を、厚生労働省のジョブ・カードを例に挙げて解説しました。キャリア形成プランの作成がなぜ今必要なのか、その答えは、予測困難な未来において自分らしいキャリアを主体的に築くための明確な指針となるからです。
成功の鍵は、ご紹介した5つのステップ「自己分析」「ありたい姿の明確化」「具体的な目標設定」「行動計画への落とし込み」「定期的な見直し」を丁寧に行うことです。特に、Will-Can-MustフレームワークやSMARTの法則といった手法を用いることで、具体的で実現可能性の高いプランを作成できます。
完璧なプランを最初から目指す必要はありません。まずは本記事で紹介したテンプレートやツールを活用し、ご自身の「現在地」を把握することから始めてみましょう。キャリア形成プランは一度作って終わりではなく、定期的に見直すことで常に最適な道しるべとなります。未来の自分への最高の投資として、今日からその第一歩を踏み出してください。

